10. ベクタ空間分析(バッファ)

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目的:

ベクタ空間分析におけるバッファの利用を理解する

キーワード:

ベクタ、バッファゾーン、空間分析、バッファ距離、境界のディゾルブ、内側方向および外側方向のバッファ、複数のバッファ

10.1. 概要

空間分析 では、 空間情報を使用してGISデータから新たな追加的な意味を抽出します。空間分析はたいていGISアプリケーションを使用して行われます。GISアプリケーションには、地物統計(例えばこのポリラインはいくつの頂点で構成されるか?)または地物バッファリングなどのジオプロセッシングのための空間分析ツールがあるのが普通です。使用される空間分析の種類は、対象領域に応じて変化します。水の管理や研究(水文学)で働く人々は、等高線の分析と、それを横切って移動する水をモデル化することに興味がありそうです。野生生物管理ではユーザーは、野生生物のポイントでの位置と環境との関係を扱う分析機能に興味があります。このトピックにおいてはバッファリングを、ベクタデータで行うことができる便利な空間分析の例として説明します。

10.2. バッファリングの詳細

バッファリング は通常2つのエリアを作成します:1つは、選択した現実世界の地物から指定距離 のエリア、もう1つは のエリアです。指定距離内の領域を バッファゾーン といいます。

バッファゾーン は、現実世界の機能を互いに遠ざける目的で機能する領域です。多くの場合、緩衝地帯は、環境を保護し、住宅および商業地帯を労働災害や自然災害から保護するため、または暴力を防ぐために設定されます。一般的なタイプの緩衝地帯は、住宅地と商業地の間のグリーンベルト、国の間の国境地帯( 図 10.6 参照)、空港周辺の騒音保護地帯、または河川沿いの汚染防止地帯です。

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図 10.6 アメリカとメキシコの境界はバッファゾーンによって分けられています( SGT Jim Greenhill 2006によって撮影された写真)。

GISアプリケーションでは、バッファゾーン は常に ベクトルポリゴン として表され、他のポリゴン、ライン、またはポイント地物を囲みます( 図 10.7図 10.8図 10.9 参照)。

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図 10.7 ベクタポイント周辺のバッファゾーン。

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図 10.8 ベクタポリライン周辺のバッファゾーン。

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図 10.9 ベクタポリゴン周辺のバッファゾーン。

10.3. バッファの種類

バッファリングにはいくつかのバリエーションがあります。 バッファ距離 またはバッファサイズは、各地物のベクタレイヤ属性テーブルで提供される数値に応じて 変化する 可能性があります。数値は、データで使用される座標参照系(CRS)に従って、地図単位で定義する必要があります。たとえば、川の土手に沿ったバッファゾーンの幅は、隣接する土地利用の強度に応じて変化する可能性があります。集約的栽培の場合、バッファ距離は有機農業の場合よりも大きくなる可能性があります( 図 10.10 および表 table_buffer_attributes 参照)。

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図 10.10 異なるバッファ距離でバッファリングされた河川

河川

隣接する土地利用

バッファ距離(メートル)

ブリード川

集中的な野菜耕作

100

コマティ

集中的な綿の耕作

150

オラニエ

有機農業

50

テレ川

有機農業

50

表 バッファ属性1:隣接する土地利用に関する情報に基き河川までのバッファ距離が異なる属性テーブル。

こうした、河川や道路などのポリライン地物の周りのバッファは、ラインの両側にある必要はありません。それらはライン地物の左側または右側のどちらかだけにできます。その場合にどちらが左側か右側かは、デジタイズの際のラインの始点から終点への方向によって決定されます。

10.3.1. 複数のバッファゾーン

地物は、複数のバッファゾーンを持つこともできます。原子力発電所は、10、15、25、および30 kmの距離で緩衝される可能性があるため、避難計画の一環として、発電所の周囲に複数のリングを形成します( 図 10.11 参照)。

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図 10.11 10km、15km、25km および 30kmという距離でポイント地物にバッファを作成する

10.3.2. 完全な境界または融合された境界を持つバッファリング

多くの場合、バッファゾーンは境界が融合しているため、バッファゾーン間に重複する領域はありません。ただし場合によっては、バッファゾーンの境界を完全に保って各バッファゾーンを個別のポリゴンとし、重複する領域を識別できるようにすることが有用な場合があります(図 図 10.12 参照)。

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図 10.12 重複する領域を示す、融合した境界をもつバッファゾーン(左)と完全な境界をもつバッファゾーン(右)。

10.3.3. 外側または内側へのバッファリング

ポリゴン地物の周囲のバッファゾーンは、通常、ポリゴンの境界から外側に広がりますが、ポリゴンの境界から内側にバッファゾーンを作成することもできます。例えば、観光省がロベン島の周りに新しい道路を計画したくて、環境法では道路は海岸線から少なくとも200メートル内側にあることが要求されるとします。観光省は海岸線から内への200メートルラインを見つけるために、内側にバッファを使用して、その線を越えないように自分たちの道路を計画できます。

10.4. 一般的な問題 / 注意すべき点

ほとんどのGISアプリケーションは、分析ツールとしてバッファ作成を提供していますが、バッファを作成するためのオプションはいろいろです。たとえば、ライン地物の左右両側へバッファリングすること、バッファゾーンの境界をディゾルブすること、ポリゴンの境界から内側へバッファを作成することは、すべてのGISアプリケーションでできるわけではありません。

バッファ距離は常に整数(整数)または小数(浮動小数点値)として定義されなければなりません。この値は、ベクターレイヤーの座標参照系(CRS)に従った地図単位(メートル、フィート、小数の度)で定義されています。

10.5. さらなる空間分析ツール

バッファ作成は重要かつ頻繁に使用される空間分析ツールですが、ユーザーがGISで使用して検討できるものは他にも多くあります。

空間オーバーレイ は、同じエリアのすべてまたは一部を共有する2つのポリゴン地物間の関係を識別できるようにするプロセスです。出力ベクタレイヤは、入力地物情報の組み合わせです( 図 10.13 参照)。

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図 10.13 2つのベクタレイヤ (a_input = 方形、b_input = 円)の空間オーバーレイ。結果のベクタレイヤは緑で表示されます。

典型的な空間オーバーレイの例:

  • インターセクション: 出力レイヤは2つのレイヤの重なる(交わる)すべての領域を含みます。

  • ユニオン:出力レイヤは組み合わせた2つの入力レイヤのすべての領域を含みます。

  • 対称差:出力レイヤには、入力レイヤのすべての領域が含まれます。ただし、2つのレイヤが重なる(交わる)領域は除きます。

  • 差分:出力レイヤには、第2の入力レイヤと重ならない(交わらない)、第1の入力レイヤのすべての領域が含まれます。

10.6. わかりましたか?

ここでは以下のことを学びました:

  • バッファゾーン は、現実世界の地物の周りの領域を示します。

  • バッファゾーンは常に ベクタポリゴン です。

  • 地物は 複数の バッファゾーンを持ちえます。

  • バッファゾーンのサイズは バッファ距離 によって定義されます。

  • バッファ距離は 整数 または 小数点 の値でなければいけません。

  • バッファ距離は、ベクタレイヤ内の各地物ごとに変えることもできます。

  • ポリゴンは、その境界から 内側へ または 外側へ バッファを作成できます。

  • 完全な または 解消された 境界で作成されたバッファゾーン

  • バッファ作成の他にも、GISでは通常、空間的な課題を解決するためにいろいろなベクタ解析ツールが提供されています。

10.7. やってみよう

ここでは人に教える際のアイデアいくつか述べていきます:

  • 交通量が劇的に増加したため、都市計画者は幹線道路を広げ、2番目の車線を追加したいと考えています。道路の周りにバッファを作成して、バッファゾーン内にある資産を見つけます( 図 10.14 参照)。

  • 抗議グループを制御するために、警察は抗議者を建物から少なくとも100メートル離しておくために中立ゾーンを設置したいと思っています。建物の周りにバッファを作成し、バッファ領域がどこにあるかイベントプランナーにわかるように色付けします。

  • トラック工場が拡張を計画しています。立地基準には、敷地候補は大型道路の1キロ以内でなければならないと規定されています。敷地候補がどこにあるかわかるように、主要道路に沿ってバッファを作成します。

  • 酒屋は学校や教会の千メートルバッファゾーン内にあってはいけないと規定する法律を市が導入したいと思っていると想像してみてください。学校の周りに1キロのバッファを作成し、それから学校に近すぎる酒屋がないか見に行ってください。

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図 10.14 道路地図(茶)周辺のバッファゾーン(緑)。どの家がバッファゾーンに入るかについて見ることができるので、今、所有者に連絡して状況について話すことができるでしょう。

10.8. 考えてみよう

利用可能なコンピュータを持っていないならば、建物の周辺にバッファゾーンを作成するために、トポシートとコンパスを使うことができます。コンパスを使って地物に沿って等距離で小さい鉛筆マークを入力してください、それから定規を使ってマークをつないでください!

10.9. より詳しく知りたい場合は

図書:

  • Galati, Stephen R. (2006): Geographic Information Systems Demystified. Artech House Inc. ISBN: 158053533X

  • Chang, Kang-Tsung (2006). Introduction to Geographic Information Systems. 3rd Edition. McGraw Hill. ISBN: 0070658986

  • DeMers, Michael N. (2005). Fundamentals of Geographic Information Systems. 3rd Edition. Wiley. ISBN: 9814126195

QGISユーザーガイドでは, QGISにおけるベクター分析についてより詳細な情報が含まれています.

10.10. 次は?

次のセクションでは、ラスタデータを使った空間解析の例として 補間 について詳しく見ましょう。