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6. ラスタデータ

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目的

ラスタデータとは何か、GISでそれがどのように利用可能かを理解します。

キーワード:

ラスタ、ピクセル、リモートセンシング、衛星画像、ジオリファレンス

6.1. 概要

前のトピックでは、ベクタデータを詳しく見てきました。ベクタ地物はジオメトリ(ポイント、ポリライン、ポリゴン)を使用して実世界を表現しますが、ラスタデータは別のアプローチを取ります。ラスタはピクセルのマトリックス(セルとも呼ばれます)で構成され、各ピクセルには、そのセルがカバーする領域の状態を表す値が含まれています( 図 6.2 参照)。このトピックでは、ラスタデータが役立つ場合、ベクタデータを使用する方が理にかなっている場合について詳しく見ていきます。

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図 6.2 ラスタデータセットはピクセル(セルとしても知られています)の行(横方向)と列(縦方向)で構成されています。それぞれのピクセルは、地理的な領域を表しており、ピクセル中の値はその領域の何らかの特徴を表しています。

6.2. ラスタデータの詳細

ラスタデータは、GISアプリケーションにおいて、エリア全体で連続していてベクタ地物に簡単に分割できない情報を表示する場合に使用されます。ベクタデータを紹介したとき、図 6.3 で画像を表示しました。ポイント、ポリライン、ポリゴン地物は、樹木、道路、建物のフットプリントなど、この風景のいくつかの地物を表すのに適しています。風景の他の地物は、ベクタ地物を使用して表現するのがより難しい場合があります。たとえば、示されている草地には、色と覆いの密度に多くのバリエーションがあります。各草地エリアの周りに単一のポリゴンを作成するのは簡単ですが、地物を単一のポリゴンに単純化する過程で、草地に関する多くの情報が失われます。これは、ベクタ地物に属性値を指定するとそれらは地物全体に適用されるため、ベクタは全体的に均一(完全に同じ)ではない地物を表現するのがあまり得意ではないためです。取りうるもう一つのアプローチは、草の色のすべての小さなバリエーションをデジタル化し、別々のポリゴンとしてカバーすることです。このアプローチの問題は、優れたベクタデータセットを作成するために膨大な量の作業が必要になることです。

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図 6.3 風景上の地物には、ポイント、ポリライン、ポリゴン(樹木、道路、住宅など)として表現するのが簡単なものもあります。あるいはそれが困難な場合もあります。例えば、草原をどのように表現しますか?ポリゴンとして?草の中に見える色の変化はどうですか?連続的に値を変更して大きな領域を表現しようとするときは、ラスタデータを使用するほうがよいでしょう。

ラスタデータを使用することは、これらの問題の解決策です。多くの人々がラスタデータを、ベクタ情報の意味をより明確にするためにベクタレイヤの背後で使用される 背景 として使用しています。人間の目は画像を解釈する上で非常に優れているので、ベクタレイヤの背後に画像を使用すると、より多くの意味を持つ地図が得られます。ラスタデータは、現実世界の表面(例えば、衛星画像および航空写真)を描写する画像に適しているだけでなく、より抽象的なアイデアを表現するのにも適しています。たとえば、ラスタを使用して地域の降雨傾向を表示したり、火災リスクを風景上に描いたりできます。この種のアプリケーションでは、ラスタ中の各セルは異なる値、たとえば 1から10の尺度で火災の危険性を表します。

衛星から取得した画像と計算値を示す画像の違いを示す例は、 図 6.4 にあります。

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図 6.4 トゥルーカラーのラスタ画像(左)には、ベクタ地物として取り込むのは難しいが、ラスタ画像を見るときには見やすいような、詳細を多く持つので便利です。ラスタデータには右に示された図のような非写真データもあります。これは3月の西ケープにおける計算された平均最低温度を示しています。

6.3. ジオリファレンス

ジオリファレンスは、地表面のどこに画像データまたはラスタデータセットが作成されたかを正確に定義するプロセスです。この位置情報は、空中写真のデジタル版と共に記憶されます。 写真をGISアプリケーションで開くと、写真は位置情報を使用して地図上の正しい場所に表示されます。通常、この位置情報は、画像内の左上のピクセルの座標、X方向の各ピクセルのサイズ、Y方向の各ピクセルのサイズ、および画像が回転される量(存在する場合)です 。これらの情報を使用して、GISアプリケーションはラスタデータが正しい場所に表示されることを確実にします。ラスタのジオリファレンス情報は、ラスタに付随する小さなテキストファイルで提供されることがよくあります。

6.4. ラスタデータのソース

ラスタデータは、さまざまな方法で取得できます。最も一般的な方法の2つは、航空写真と衛星画像です。航空写真では、カメラを底に取り付けた飛行機で領域を飛行します。次に、写真がコンピュータにインポートされ、ジオリファレンスされます。衛星画像は、地球を周回する衛星が特殊なデジタルカメラを地球に向け、通過する地球上の領域の画像を撮影することで作成されます。画像が撮影されると、 図 6.5 に示されているような特別な受信局に無線信号を使用して地球に送り返されます。飛行機や衛星からラスタデータをキャプチャするプロセスは、 リモートセンシング と呼ばれます。

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図 6.5 ヨハネスブルグ近くにあるHartebeeshoekのCSIR衛星アプリケーションセンター。特別なアンテナは衛星が頭上を通過するときに追跡し、電波を使って画像をダウンロードします。

その他に、数値計算でラスタデータを算出できます。たとえば、保険会社は警察の犯罪事件の報告を受け取り、各地域で犯罪の発生率がどれほど高いかを示す全国的なラスタ地図を作成する場合があります。気象学者(気象パターンを研究する人々)は、気象観測所から収集されたデータを使用して、平均気温、降雨量、および風向を示す州レベルのラスタを生成する場合があります( 図 6.5 参照)。このような場合、補間などのラスタ分析手法を使用することがよくあります(トピック 空間分析(補間) で説明します)。

時にはデータの所有者が、使いやすい形式でデータを共有したいために、ベクタデータからラスタデータが作られることがあります。たとえば、道路、鉄道、教区などのベクタデータセットを持つ会社は、従業員がこれらのデータセットをWebブラウザで表示できるように、これらのデータセットのラスタバージョンを作成することがあります。これは通常、ユーザーが認識する必要がある属性をラベルやシンボルで地図上に表すことができる場合にのみ有効です。通常、ラスタレイヤにはそれに関連付けられた属性データは含まれていないため、ユーザーがデータの属性テーブルを参照する必要がある場合にラスタ形式で提供するのは悪い選択です。

6.5. 空間分解能

GISのすべてのラスタレイヤには、空間分解能を決定する固定サイズのピクセル(セル)があります。これは、画像を小さな縮尺で見て( 図 6.6 参照)、次に大きな縮尺に拡大すると( 図 6.7 参照)明らかになります。

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図 6.6 小縮尺で使用するとこの衛星画像はきれいに見えます…

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図 6.7 ...が、大縮尺で見た場合は画像を構成する個々のピクセルが見えてしまいます。

いくつかの要因が画像の空間分解能を決定します。リモートセンシングデータの場合、空間分解能は、通常、画像を撮るために使用されるセンサの性能によって決定されます。例えば、SPOT5衛星は、各ピクセルが10m×10mの画像を撮影できます。 MODISなどの他の衛星では、ピクセルあたり500mx500mの画像しか撮影しません。航空写真では、50cmx50cmのピクセルサイズは珍しくありません。ピクセルサイズが小さい画像は、画像の詳細がよくわかるため、「 高解像度 」画像と呼ばれます。ピクセルサイズが大きい画像は、画像の細部を示す量が少ないため、「 低解像度 」画像と呼ばれます。

空間分析によって算出されるラスタデータ(先に述べた降雨量図など)では通常、ラスタを作成するために使用される情報の空間密度が空間分解能を決定します。例えば、高解像度の平均降雨量図を作成したい場合、理想的には互いに近接した多くの気象観測所が必要になるでしょう。

高空間分解能で取り込まれたラスタを知る上で重要なことの1つは、記憶容量要件です。 3 x 3ピクセルのラスタを考えてみてください。各ピクセルには平均降雨量を表す数値が含まれています。ラスタに含まれるすべての情報を保存するには、コンピュータのメモリに9個の数値を格納する必要があります。今、南アフリカ全体の1キロ×1キロメートルのピクセルでラスタレイヤを作成したいとします。南アフリカはおよそ 1,219,090 km 2 です。これは、すべての情報を保持するために、ハードディスクに100万を超える数字を保存する必要があることを意味します。ピクセルサイズを小さくすると、必要な記憶容量が大幅に増加します。

低空間分解能を使用した方が、広い領域で作業したくて細部のいずれかの領域を見るのに興味がない場合、便利なこともあります。天気予報で見られる雲の地図はその一例です。全国の雲が見えると便利です。ある雲だけに高解像度でズームインしても、今後の天気を教えてくれることはありません!

その一方、小さな領域に興味があるなら、低解像度のラスタデータを使用することは問題となる可能性があります。画像から個々の地物はたぶん作れなくなるからです。

6.6. スペクトル分解能

デジタルカメラや携帯電話のカメラでカラー写真を撮ると、カメラは電子センサーを使って赤、緑、青の光を検出します。画像がスクリーンに表示されたりプリントアウトされたりすると、赤、緑、青(RGB)の情報が組み合わされて、目に見える画像が表示されます。情報はまだデジタル形式ですが、このRGB情報は別々のカラー バンド に保存されます。

私たちの目ではRGB波長しか見ることができませんが、カメラの電子センサーであれば目には見えない波長を検出できます。もちろん、手持ち式のカメラでは、ほとんどの人は自分のペットだの何だのの写真を見たいだけなので、スペクトルの 不可視 部分からの情報を記録するのはおそらく意味がありません。光スペクトルの不可視部分のデータを含むラスタ画像は、しばしばマルチスペクトル画像と呼ばれます。 GISでは、スペクトルの不可視部分を記録することは非常に便利です。例えば、赤外光を測定すると水域を特定するのに有用です。

光のマルチバンドを含む画像があるとGISで非常に役立つので、ラスタデータはしばしばマルチバンド画像として提供されます。画像の各バンドは別々のレイヤのようなものです。GISでは3つのバンドを組み合わせて、それらを赤、緑、青の3つのバンドとして表示するので、人間の目で見ることができます。ラスタ画像のバンド数は、 スペクトル分解能 と呼ばれます。

画像が1つのバンドのみからなる場合は、よく グレースケール 画像と呼ばれます。グレースケール画像では、偽色を適用してピクセルの値の差異をより明瞭にすることができます。偽色が適用された画像は、しばしば 擬似カラー画像 と呼ばれます。

6.7. ラスタからベクタへの変換

ベクタデータの議論では、多くの場合、ラスタデータは、ベクタ地物をデジタル化するためのベースとして使用される背景レイヤとして使用されると説明しました。

別のアプローチは、高度なコンピュータプログラムを使用して画像からベクタ地物を自動的に抽出することです。道路などの一部の地物は、隣接するピクセルからの色の突然の変化として画像に表示されます。コンピュータプログラムは、そのような色の変化を探し、結果としてベクタ地物を生成します。この種の機能は通常、非常に特殊な(しばしば高価な)GISソフトウェアでのみ利用可能です。

6.8. ベクタからラスタへの変換

ベクタデータをラスタデータに変換するのは便利なことがあります。これの1つの副作用は、変換が行われるときに属性データ(元のベクタデータに関連付けられた属性)が失われることです。ベクタをラスタ形式に変換すると、GIS以外のユーザーにGISデータを渡したいときに便利です。より単純なラスタ形式では、ラスタ画像を渡された人は、特別なGISソフトウェアを必要とすることなく、単純にコンピュータ上の画像として見ることができます。

6.9. ラスタ解析

ラスタデータに対して実行できる、ベクタデータには使用できない、非常に多くの分析ツールがあります。例えば、ラスタを使用して、地表面上の水の流れをモデル化できます。この情報は、地形に基づいて、分水界や流域ネットワークがどこに存在するかを計算するのに使用できます。

ラスタデータは、作物生産を管理するために、農業や林業でよく使用されます。たとえば、農家の土地の衛星画像を使用すると、植物の生育不良のある地域を特定し、その情報を使用して影響を受けた地域にのみより多くの施肥することができます。森林管理者はラスタデータを、ある地域から採取できる木材の量を推定するために使用します。

ラスタデータは災害管理にとっても非常に重要です。浸水する可能性のある領域を識別するために、デジタル標高モデル(各ピクセルに海抜高度を含む一種のラスタ)の解析が使用できます。これは、救助活動と救援活動を最も必要とされる地域へ向けるために使用できます。

6.10. 一般的な問題 / 注意すべき点

すでに述べたように、高解像度のラスタデータは、コンピュータ記憶容量を大量に必要とすることがあります。

6.11. わかりましたか?

ここでは以下のことを学びました:

  • ラスタデータは規則的なサイズの ピクセル のグリッドです。

  • ラスタデータは たえず変化する情報 を表示するのに適しています。

  • ラスタ内のピクセルの大きさは、その 空間分解能 を決定します。

  • ラスタ画像は1つまたはそれ以上の バンド を含みます。それぞれが空間的なエリアをカバーするが、異なる情報を持ちます。

  • ラスタデータは、電磁スペクトルの異なる部分からのバンドが含まれている場合、それらは マルチスペクトル画像 と呼ばれます。

  • マルチスペクトル画像のバンドの三つは色、赤、緑、青で表示できるので、それらは見ることができます。

  • 単一バンドの画像はグレースケール画像と呼ばれます。

  • 単一バンドのグレースケール画像は、GISにより疑似カラーで表示できます。

  • ラスタ画像は、記憶領域を大量に消費することがあります。

6.12. やってみよう

ここでは人に教える際のアイデアいくつか述べていきます:

  • どんな状況であればラスタデータを使用し、どんな状況であればベクタデータを使用するか、生徒たちと議論しましょう。

  • グリッド線が描かれたA4の透明シートを使用して、学校のラスタ地図を生徒たちに作成させてください。 OHPフィルムをあなたの学校のポスター用紙または航空写真に重ねます。ここで、各生徒または生徒のグループが、特定のタイプの地物を表すセル内で色付けされるようにする。運動競技場、樹木、歩道などがすべて完成したら、すべてのシートを重ね合わせて、あなたの学校の良いラスタ地図表現を作成するかどうかを確認します。ラスタとして表現されたときにどのタイプの地物がうまく機能しましたか?セルサイズの選択は、さまざまな地物タイプを表現する能力にどのように影響しましたか?

6.13. 考えてみよう

コンピュータを使用できない場合は、紙と鉛筆を使用してラスタデータを理解できます。サッカー場を表すために、紙の上に四角形のグリッドを描きます。サッカー場の芝カバーの値を表す数字でグリッドを塗りつぶします。パッチが裸の場合、セルに0の値を与えます。パッチが裸と覆われている混合の場合は、1の値を与えます。領域が完全に芝で覆われている場合は、値2を与えます。次に鉛筆を使用してそれらの値に基づいてセルを色付けします。値2の色のセルは濃い緑です。値1は色が薄い緑色になり、値0は茶色で色付けされます。色づけが終わったら、サッカー場のラスタ地図ができているはずです!

6.14. より詳しく知りたい場合は

図書:

  • Chang, Kang-Tsung (2006). Introduction to Geographic Information Systems. 3rd Edition. McGraw Hill. ISBN: 0070658986

  • DeMers, Michael N. (2005). Fundamentals of Geographic Information Systems. 3rd Edition. Wiley. ISBN: 9814126195

Webサイト: https://en.wikipedia.org/wiki/GIS_file_formats#Raster

QGISユーザーガイドには, ラスタデータの操作についてより詳細な情報が含まれています.

6.15. 次は?

次のセクションでは、最高のデータの品質を保証するための トポロジ について詳しく見てみましょう。